妊娠中の鍼灸治療

妊娠中の鍼灸治療とは

【妊娠中に鍼灸治療はできますか?」とご質問をいただくことがあります。

からんこえ鍼灸院では、妊娠初期から後期まで、さまざまな妊婦様を施術してまいりました。

当院は厚生労働省に認可された国家資格をもつ鍼灸師が施術します。また、女性鍼灸師フォーラム主催「妊婦さんへの鍼灸治療」実技セミナー修了者がいる治療院です。

妊娠中の体の変化から、当院での鍼灸治療適応症、鍼灸治療の安全性、ご予約をお断りする場合、などをご紹介したいと思います。

妊娠中の体の変化

1.妊娠期間について

最終月経開始日を「満0日」とし、満0~6日を「満0週」、満7~13日を「満1週」と数え、分娩予定日は満280日(=満40週0日)となります。また、28日間を妊娠歴の1カ月と定め、妊娠持続期間は10カ月とされています。日本産婦人科学会では、妊娠満42週、あるいは294日以降を過期妊娠と定義しています。

最近では、促進剤などを使用し予定分娩という出産方法もあり、分娩予定日が満38週になる方もいます。


2.体の変化について

妊娠初期

妊娠中期

妊娠後期

妊娠初期 0~15週

〇第1カ月(0~3週)

見た目の変化はありませんが、人によっては微熱が続いている感覚があります。

▶子宮の大きさ→鶏卵大


〇第2か月(4~7週)

4週以降で妊娠反応陽性になり、5~6週ころからつわり症状が始まります。下腹部や、腰が重たく感じます。

▶子宮の大きさ→鵞卵大

▶胎嚢6週→1.5センチ


〇第3か月(8~11週)

尿の回数が増えます。便秘になりやすくなります。

▶子宮の大きさ→手掌大

▶子宮底(高さ)→恥骨結合上縁

▶胎嚢8週→3.0センチ


〇第4カ月(12~15週)

胎盤が完成します。つわりがおさまり、食欲がでます。このころから乳房が張ってきます。また、心拍数、心拍出量が増加します。

▶子宮の大きさ→小児頭大

▶子宮底→恥骨結合上縁2~3横指

▶子宮底長→12センチ


妊娠中期 16~27週

〇第5カ月(16~19週)

子宮が大きくなるにつれて、胃や肺が圧迫され、動機や息切れが生じるようになります。胎動を感じはじめます。

▶子宮の大きさ→成人頭大

▶子宮底→臍下2~3横指

▶子宮底長→15センチ


〇第6カ月(20~23週)

下腹が目立ち始めます。乳房が大きくなり、人によっては乳汁がでることもあります。基礎体温が徐々に低下し、このころから低温層になります。

18~22週以降、個人差もありますが胎動を感じ始めます。

▶子宮底→臍高~臍上1横指

▶子宮底長→21センチ

▶赤ちゃんの頭(児頭大横径)21週→5.0センチ

▶赤ちゃんの足(大腿骨長)→3.0センチ


〇第7カ月(24~27週)

お腹の上のほうも膨らんできます。足がむくみやすく、貧血になりやすくなります。心拍出量が最大になります。

▶子宮底→臍上2~3横指

▶子宮底長→24センチ

▶赤ちゃんの頭25週→6.0センチ

▶赤ちゃんの足24週→4.0センチ

妊娠後期 28~41週

〇第8カ月(28~31週)

妊娠線ができやすくなります。お腹の張りを感じやすいです。心拍数が最大になり、羊水量がピークで800ミリリットルに。

▶子宮底→剣状突起(ブラの下くらいにある骨)と臍の中間

▶子宮底長→27センチ

▶赤ちゃんの頭28週→7.0センチ

▶赤ちゃんの足28週→5.0センチ


〇第9カ月(32~35週)

子宮がおおきくなり、胃がつかえたり、動機があります。おりものがすこし増えてくる頃です。循環血液量が最大になり、貧血ぎみになりやすいです。

▶子宮底→剣状突起下2~3横指

▶子宮底長→30センチ

▶赤ちゃんの頭32週→8.0センチ

▶赤ちゃんの足33週→6.0センチ


〇第10カ月(36~41週)

お腹がよく張るようになります。赤ちゃんが下がり、胃のつかえがとれてきます。膀胱が圧迫され、トイレが近くなります。

▶子宮底→剣状突起と臍の中間

▶子宮底長→33センチ

▶赤ちゃんの頭38週→9.0センチ

▶赤ちゃんの足39週→7.0センチ


3.体重の増加について

妊娠中の体重管理はとても大切です。

基準となるのは、妊娠前の体重+(身長×身長)=IBMになります。

母子手帳を見ながら、ぜひ計算してみてください。

当院での適応症(マイナートラブル)

マイナートラブルとは

妊娠中の女性が自覚する不快症状をマイナートラブルと呼ばれています。

様々の臨床家によって違いがあり、妊娠によるホルモン環境の変化、胎児の発育による生理的変化、精神的変化が原因になっていることが多く「医学的に母体への影響が少ない」症状とされています。

初産婦のほうが経産婦よりも多く見られ、就労妊婦より未就労妊婦のほうが起こりやすいことが分かっています。これは休業時間の長さや過ごし方の関係があるためです。また妊娠全期において高発症率なのは、易疲労感・頻尿・全身疲労感・腹部の締め付け感・強い眠気・口渇・帯下の増加の7症状で、初期は皮膚の乾燥・肩こり及び嘔気、中期は皮膚の乾燥及びイライラ感、末期は胃部圧迫感・下腹部の緊張と痺れが高い発症率になります。

マイナートラブルの種類

当院で治療している、マイナートラブルの種類はつわり、不眠、冷え、耳鳴り、腰・背部痛、下痢・便秘、痔、むくみ、足の静脈瘤、足のけいれん・こむら返り、帯下、頻尿、めまい・たちくらみ、皮膚のかゆみ、肩こり、手足のしびれ、動悸、髪の毛のトラブル、疲労、お腹の張り、下腹部痛、貧血などです。

主な症状や、対処法を紹介しますが、一番は赤ちゃんがすくすくと育つ環境を整えることだと思います。ツボ療法など鍼灸治療は、薬のように症状に対して直接的な効果をすぐに発揮するものではありません。同時に、赤ちゃんに対して悪影響をもたらすものでもありません。妊娠期間中、定期的に施術をすることで症状を緩和しよりよい妊娠生活を送り、出産をサポートするものだと考えています。


【つわり】

妊娠による内分泌の変化(エストロゲン、Hcg、甲状腺ホルモンの急激な上昇)や精神的要因(妊娠・出産への不安や、家庭内での問題など)によって起こるとされています。


症状

悪心、嘔吐、食欲不振、全身倦怠、めまい、頭重感、頭痛、耳鳴り、口渇、不眠、腹痛、下腹痛、胃痛、流涎、胃圧迫感、胸やけ、下痢、便秘、悪寒、熱感、微熱、心悸亢進、嗅覚過敏、異味症、手足のしびれ


特徴

妊娠が分かってすぐ、5週頃から起こり胎盤の完成してくる16週から18週頃に落ち着いてくる人がほとんどですが、人によっては出産前まで続き出産後に症状が消失します。


【不眠】

妊娠中心配ごとや、昼間の安静、睡眠のとりすぎで夜に寝つかれないなどが原因で不眠になる人がいます


現代医学的対処法

室温の温度や騒音、湿度などの環境状態に気をつける

ぬるめのお風呂につかる

起床時間を朝早くしてみる


東洋医学的対処法

心配事が多い→神門

消化器系の働き低下→足三里



【冷え】

からだの内部などの中枢温と手足など末梢温の温度転差がみられ、冷えの自覚を有している状態


症状

体温調節機能の失調で起こり、皮膚や筋肉や血管も収縮し、血行が悪くなり、腰痛や肩こりが生じます。また、体温が1度下がると免疫力は約3割低下するともいわれ、感染症にかかりやすくなります。その他、代謝も悪くなり、むくみなども出てきます。


特徴

妊娠中の冷えは、冷えのない妊婦に比べ早産・前期破水・微弱神通・遷延分娩(せんえんぶんべん)の発症率が高くなり、特に95%の確率で早産になる割合が2.21倍から5.17倍であることがわかっています。また、遷延分娩においても冷え性の妊婦は約2.4倍発生率が高いです。

※参考文献:妊婦の冷え性がもたらす分娩時のアウトカム評価ーアンメットメディカルニーズの解明ー中村幸代


逆子について

当院は逆子治療を行なっております

妊娠28週から34週までが回りやすい期間と言われています

詳しくは下記のブログに記載していますのでご覧下さい

症状別ページ

鍼灸治療の安全性

妊娠中の鍼灸治療は、他の疾患の場合以上に鍼灸による副作用(特に流産の誘発)が問題視されます。

鍼灸の副作用についての議論やそのための実験的な裏付けの検討などは、まだ充分であるとは言いがたい状況であるとされています。

特に、「合谷(ごうこく)」、「三陰交(さんいんこう)」については1742年まで禁ずると記載が出てくるのは『銅人兪穴鍼灸図経』を踏まえたものであると考えられています。古くから、鍼灸は行われていましたが、産婦人科鍼灸の禁鍼禁灸穴については黄帝内経明堂から(五漢から)続けられています。

現在の産婦人科関連の副作用については、1952年に石野先生が20例の妊婦に「三陰交」へ3~5壮施灸しなんら副作用を認められなかったという報告から、1980年に陳先生が妊娠中の100例に対して不定愁訴の治療を、他の300例に中絶目的で鍼を行ったが結果的に流産は一例もなかったと報告されました。この時「三陰交」「合谷」に中絶目的で刺鍼したが、流産は全く起きなかった、妊娠に対して無害で疾病治療に有意であると結論し、妊娠中の禁鍼禁灸穴である「合谷」、「三陰交」は使ってはいけないという説は信頼できない、もっときちんと研究すべきであって、古来からある説だけを鵜呑みにしてはいけないと述べています。

1981年には蠣崎先生が20名の妊娠2か月以下から9カ月の50例の妊婦に「三陰交」「合谷」刺鍼し、うち2例が治療後無事出産し、他48例は何の変化もなかったという報告をしています。

1987年には林田先生が584例の逆子治療のため、灸頭鍼を「三陰交」に行ったが、「本法は、安全で矯正率が高い方法である」と報告しています。

このほかにも、過去の多くの論文で副作用はないとされています。

当院は、過去の論文も踏まえ、慎重に行い、問題が生じる兆候が見られるときは速やかな対処をすることを心掛けています。

※参考文献:女性と鍼灸ー産婦人科領域の鍼灸の安全性ー形井秀一ほか

ご予約をお断りする場合

上記にも記載しましたが、産婦人科領域における鍼灸治療をするにあたり、あらかじめお断りすることがあります。

ご予約前に、1医師の同意が得られない、2早期陣痛(腹痛)がある、3性器出血、4、破水、5持続的な激しい頭痛、6持続的な嘔吐、7高血圧の場合は、速やかにかかりつけの産婦人科を受診していただくようお願いしています。

施術前は、母子手帳をお借りして経過を一緒に見せていただき、問診票にはかかりつけ医の情報、出産する病院の情報の記入をお願いしています。問診票記入後は、血圧測定からはじめ、終了後には来院報告書をお渡しします。個人情報は治療への安全に必要なときのみ使用し、他では使用いたしません。


当院の考え方・方針

まずはお母さんが元気でなくちゃ!

をコンセプトに、お母さんとお子さんの笑顔が増えるお手伝いをしています

出産にともなう、さまざまな症状は結果的に出産後症状がなくなるとはいえ、辛く感じることも多いかと思います。

幸せなマタニティ生活だったな、赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみだな、生まれてきたらこうしたいななど、お母さんが温かい気持ちになることでお腹の子にも伝わり、いいお産につながると信じています。

微力ながら、お手伝いできると幸いです。


また、当院のホームページ上に掲載している内容は、女性鍼灸師フォーラムでの研修時に調べ、学んだ内容とそこからさらに付け足しながら随時更新しています。情報が必要な妊婦様へ届くよう、最新の情報も取り入れていきたいと考えています。そのため、誤った内容を拡散したくありません。許可なくコピーペーストし、他のサイトであたかも自分で書いた内容のように掲載しないでください。見つけた場合は直ちに通報し、適切な措置をとらせていただきます。

※参考文献:出産準備教室 辻内敬子/レディース鍼灸 矢野忠/女性鍼灸師フォーラム資料


からんこえ鍼灸院

鍼灸師:水口加奈子(女性スタッフ)

090-6442-2776

karankoe.hariq@gmail.com

当院は完全予約制です。 ホームページにて、休業日を更新させていただきます。 

妊娠初期のつわり、悪阻、むくみ、冷え症状から、後期の逆子、腰痛、肩こり、胃もたれなど、元気な赤ちゃんを出産したい妊婦さんを鍼灸でサポートします。 また、安産の灸も人気で妊娠37週以降の妊婦さんにおすすめです。

 ぜひお問い合わせください (過去のお伺い先…名古屋市北区、名古屋市西区、名古屋市中村区、愛知県愛知郡、愛知県犬山市、愛知県江南市、愛知県小牧市、他)

※コロナウイルスの影響により、子供の預け先がない場合は事前に連絡いたします。